「山本一力と江戸前の世界」(NPO法人「江戸前21」2009年11月1日)
「山本一力と江戸前の世界」が、江戸深川の清澄庭園・大正記念館で開催された。この催しは、人の絆や地域を育みつなぐことで江戸精神の次世代継承を目指す「江戸
前21」がNPO法人に認証された記念に実施したもので、直木賞作家山本一力氏の講
演に多くのファンが集まった。


江戸の名残り豊かな富岡に暮らし深川で教わったという山本一力氏が気概を込めて語
った作家人生、そして作法を教え「わきまえ」ある人を育ててくれる江戸の町、江戸前と
いう大きな文化が伝えようとしていることの真髄、軽いユーモアに包まれながらも奥深い
話題に感銘を受けた人も多かったことだろう。
山本氏の代表作「銀しゃり」のモデルになった三ツ木新吉氏が講演の傍らで握った江戸
前鮨が聴衆に振る舞われると、ステージでは山本氏、三ツ木氏、客席からミツカンの「寿
司博士」松下氏も加わっての寿司談義、自宅で旨い寿司を作るコツなど他では聴くこと
のできない話題に続き、亀戸道場社中の梅后流江戸芸かっぽれも披露されて、江戸情
緒満載のひとときに満員の会場は大いに盛り上がった。
江戸独自の生活文化と地域ネットワークから新しいトレンドを創出していこうとする「NPO
江戸前21」の船出にふさわしいこの粋なイベントは、一人一人の聴衆に山本氏からの江
戸土産まで渡されて大満足のうちに閉会。主催者の話では事前に申し込みをした133人
のうち一人の欠席者もなく全員参加であったということで、これは数多く開催されているイ
ベントのなかでも極めて稀有な事例ではないだろうか。人々の関心と期待の高さが窺える。
二六〇年間戦争のない時代を築くことに成功した江戸時代は今世界から注目されている
というNPO代表の話もあり、現代社会が見失ってきた大切なものを取り戻すために、もう
一度江戸文化を考えてみたいという人々の強烈な思いが伝わってくる意義深い二時間で
あった。
イベントナビ 三輪祐児